妊娠とトキソプラズマ|1/3

妊娠とトキソプラズマ 1/3

※お急ぎの方はこのページの内容を1ページに凝縮したトキソプラズマのまとめをご覧ください。

トキソプラズマは食用肉の中や畑の土の中、猫の糞などに生息するとても小さな生物(原虫)です。
決して珍しい生物ではないのですが、妊娠中の感染は胎児へ重大な影響を及ぼすことがあります。
ここではトキソプラズマの基礎知識から赤ちゃんへの影響、その治療などについて解説します。


トキソプラズマの大きさ

トキソプラズマ(Toxoplasma gondii) は「原虫(protozoa)=原生生物」に分類される小さな生物です。
原虫は単細胞生物で動物的な動きをします。

膣炎などの原因となる性病の一種であるトリコモナス、熱帯地方で重要なマラリアなども原虫ですね。
トキソプラズマは三日月型をした原虫で、その大きさは縦7μm、横3μmほどです(1000μm=1mm)。
人間の赤血球と同じくらいの大きさです。

原虫は「虫」のようなイメージですが、実は細菌に近いかなり小さな生物なんですね。


トキソプラズマの感染率

トキソプラズマは決して珍しい生物ではなくごくごくありふれた生物なんです。
土の中や水の中にも住んでおり、猫、ネズミ、馬、牛、豚、羊、鳥など沢山の種類の温血動物に感染しています。
当然人間にも感染してします。ただ、人間の感染率は地域差があります。

生ハムやサラミなどを食べる習慣の多いヨーロッパの人たちの感染率は高く、特にフランス人は80%くらいがトキソプラズマに感染しているようです。その他、生水を飲む地位や野良猫などが多い衛生状態のわるい地域でも感染率は高いようですね。

日本は全体的に衛生状態がとても良く、ヨーロッパほど生肉を食べる習慣がないので、日本人の感染率は低く、10%(10人に1人しか感染していないということですね)くらい、妊婦さんのデータだと7%くらいと言われています。

トキソプラズマに感染すると、免疫がつくので妊娠前に既に感染している場合はほとんど問題となることはありません。妊婦さんにとってトキソプラズマが問題となるのは
「妊娠中に始めて感染した場合(初感染)」
なんです。



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トキソプラズマのライフサイクルと感染経路

トキソプラズマの感染を予防するためには彼らのライフサイクル(生活環)を知る必要があります。
難しいところですがしっかりついてきてくださいね!

感染性生物が感染する対象(人間や猫)を「ホスト(host)」=宿主」といいます。
感染後に増殖をして自己を増やしてゆきますが、そのとき有性生殖(オスとメスが遺伝子を掛け合わせる)が行われる宿主を「終宿主(definitive host)」と言います。
また無性生殖(自己の単なるコピーですね)が行われる宿主を「中間宿主(intermediate host)」といいます。
トキソプラズマは細胞内寄生原虫なのでホストの細胞に侵入して自分を増やしてゆきます。

トキソプラズマの厄介なところは中間宿主の中でも増殖して感染が広がってしまうことなんです。
そのため、世の中には至る所にトキソプラズマが存在しています。

中間宿主である人間、豚、犬、馬、牛、羊、鳥などの感染

温血動物に感染したトキソプラズマはその形態の一つである「組織シスト」を形成して潜んでいます。
その組織シストを食べた人や動物が新たにトキソプラズマに感染します。

中間宿主に感染した後は腸などの壁から中間宿主の細胞内に侵入し猛烈に増殖します。
このとき免疫力がちゃんと機能している元気な人であれば、ほとんど症状はありません。あっても軽い風邪のような症状であったり、リンパ節が腫れたりする程度です。つまり感染に気づきません。
これを「不顕性感染」と言います。
このとき中間宿主が妊娠していると胎盤を介して赤ちゃんへ感染が広がります。

その後、中間宿主の免疫力のためにトキソプラズマの増殖は抑えられますが、ここでなんとトキソプラズマはバリアーを形成して中間宿主の脳や筋肉の中に潜んでしまいます。
このバリアーを張った形態が先述した「組織シスト」ですね。

免疫応答により抗体が形成された後、新たに中間宿主に新しいトキソプラズマが侵入してきても、獲得した免疫力のために迅速に排除され新たな感染は成立しません。


終宿主であるネコの場合はどうでしょうか?

ネコが感染したネズミなどを捕まえて食べると、ネズミの筋肉の中にいた組織シストがネコの腸管へ入ります。

組織シストから出てきたトキソプラズマは活動性を増してネコの腸の細胞で活発に増殖を始めます。
ここで中間宿主と違って、オスのトキソプラズマとメスのトキソプラズマが形成され、有性生殖を行い、大量のトキソプラズマを形成します。
ここで形成されるのは未成熟オーシストと呼ばれるものです。

ネコが糞をするとその糞の中にこの未熟オーシストが排泄されます。
排泄されたばかりのオーシストは感染性は低いのですが数日後には未熟オーシストが成熟オーシストになり感染力を持つようになります。

感染性のトキソプラズマを排泄するのは2週間くらいだけと言われています。
初感染から2週間以上経過するとネコの免疫力によりトキソプラズマの増殖は抑制され、トキソプラズマも中間宿主と同じようにひっそりとネコの体内で暮らすようになります。

ただ、ネコがいつ初感染したかを調べる方法が無いためいつでもネコは感染源となりうると考えて対応したほうがよいですね。





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