母体血胎児染色体検査(新しい出生前検査)NIPT
母体血胎児染色体検査(NIPT)とは
お母さんの血液検査を行い胎児の染色体の検査を行う、というちょっと信じられない検査法が世界的に広まっています。
母体血胎児染色体検査(non-invasive prenatal genetic testing;NIPT)と呼ばれる新しい出生前検査です。
母体の血液と胎児の血液は基本的には混じり合わないようになっています。
胎児は母体血から酸素や栄養分を受け取り、老廃物や二酸化炭素を母体へ渡しています。
母体血と胎児血が接するところが胎盤です。
胎盤の絨毛細胞が母体血と接しており、絨毛細胞由来(胎児と同じ染色体を有します)のDNAが母体血液中に少量流れ込みます。
このごく少量のDNAを採取し、増幅し主に染色体の数の異常であるダウン症、18トリソミー、13トリソミーなどの有無を診断します。
NIPTの対象となる条件と対象となる疾患
この新しい出生前診断の対象となる方は以下のような方です。
NIPTの対象となる条件 |
母体血清マーカー検査で胎児が染色体異常を有する可能性がある場合 |
染色体異常を有する子供を出産したことがある場合 |
高齢妊娠の場合 |
両親のいずれかに染色体の転座がある場合 |
これは日本産婦人科学会が指針として提案しているものです。
検査を受けられる場所は大各病院などの研究機関がメインとなっています。
どこで受けられるかは「母体血胎児染色体検査」「NIPT」などで検索してみてください。
対象となる疾患は染色体の数に異常があるダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどです。
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NIPTの検査原理と検査の流れ
検査時期は
妊娠10週から可能で、出生前診断としてはかなり早くから受けることができます。
母体の血液を少量採取し検査へ提出します。
母体血にわずかに含まれる胎児DNAを最新の増幅技術を使って増幅します。
以下ではダウン症を例に説明します。
ダウン症は21番目の染色体が通常2本のところが3本ある、染色体の数的異常です。
全染色体に閉める21番染色体の量は正常で1.3%ですが、ダウン症の場合はその割合が1.42%とごくわずかに増加しています。
この0.12%の量の違いを検出しダウン症があるのかないのかを判定します。
検査結果報告期間はおおむね10日ほどです。
結果により羊水検査を希望する場合は16週以降に羊水検査が行われます。
施設によりかかる費用は違いますが、現在だいたい20万円前後のようです。
複数回のカウンセリングが行われるのでカウンセリング料などは別途必要な場合が多いですね。
NIPTの利点
早期に診断することができる
妊娠10週から検査が出来るので十分にカウンセリングを行い、結果に対してどう対応するのかを熟考することができます。
羊水検査が必要となったときも16週以降なので十分に対応が可能ですね。
侵襲がない
これは最大の利点です。
胎児の検査をするのに母体の採血を少量行うだけですみます。
母体に針を刺すので侵襲が「ゼロ」ではありませんが、健診でも一般的に採血は行われるのでほとんど問題となるリスクではないと思います。
ただ、この点が逆に倫理的な問題点ともなり得ますが。この点は後述します。
診断精度が非常に高い
検査によりどのくらい精度よく疾患を診断できるのかを診断精度といいます。
NIPTはこれまでの検査の中でもずば抜けて検査精度が高いと言われています。
ダウン症を例にとるとダウン症の赤ちゃんをダウン症と判断する精度(陽性的中率)は
99.1%、ダウン症でない赤ちゃんをダウン症でないと判断する精度(陰性的中率)は
99.9%とほぼ100%に近い精度なんです。
陽性的中率は若干下がっても陰性的中率がほぼ100%なので、NIPTで陰性という結果が出れば、ほぼダウン症ではないといえますね。
これだけの診断精度だと侵襲的な羊水検査を受ける方が激減する可能性があります。
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NIPTの問題点
とても簡便で、侵襲がなく、正確なNIPTですが、問題点がない訳ではありません。
胎盤性モザイク
胎盤だけに染色体異常があり、胎児には染色体異常がない「胎盤性モザイク」なるものがあります。
この場合はNIPTで異常ありですが、胎児は正常となります。
結果で異常ありが出たときには羊水検査で確認することが勧められる訳です。
低リスク母体の診断精度の低下
高齢などの染色体異常リスクが高い場合はこの検査の診断精度はかなり高いものになりますが、高齢でもない低リスクの場合の診断精度は低下します。低リスクの場合は間違った診断結果となる可能性があります。
倫理的な問題
これまで検査と母体血胎児染色体検査の決定的な違いは「採血という非常に侵襲の少ない検査で胎児の染色検査が100%にかなり近い精度で行える」と言う点です。
羊水検査は胎児成分を直接採取するので正確ですが、針を刺すという侵襲が伴い、誰でも簡単には検査を受けられません。
NIPTは日本において、現時点でどこででも受けられる検査ではなく、先述した条件を満たす場合に、限られた施設(正確で詳細な遺伝カウンセリングを提供できる施設)で行われる限定的な検査とされています。
ただ、母体血を採取するだけなので、理論的には血液検査ができる医療機関であれば産婦人科でなくても検査を行うことが可能です。この検査を専門のカウンセリングを行わずに行ってはならないという法律がある訳ではないので、いずれは民間企業でこの検査を請け負う業者等が現れる可能性は十分高いと思います。
そうなると安易な人工妊娠中絶術が増加する可能性も指摘されています。
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