急性妊娠脂肪肝|1/2

急性妊娠脂肪肝 1/2

急性妊娠脂肪肝とは

急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy : AFLP)とは妊娠後期頃に発生し、急速に肝臓の機能が障害を受け、妊娠が終了しないと重症化し、母児ともに死亡する恐れのあるとても怖い病気です。 肝臓の中に脂肪が蓄積して様々な症状を引き起こします。怖い病気ですが、その発生頻度は妊娠した人の10000人から15000人に1人くらいととても珍しい病気です。

昔は母児の死亡率は75%から85%と非常に高率でしたが、早期診断、治療のおかげで最近は18−23%とかなり低下してきました。注意深いケアと急いで出産を終了させること(急速遂娩といいます)が一番の治療となります。

症状はヘルプ症候群と似てますが、頻度はこちらの方が圧倒的に少ないです。
妊娠高血圧症候群とヘルプ症候群とAFLPはお互いに関連性があると推測されています。

臨床的なこと

AFLPの発症の多くは妊娠後期、35〜36週ころです(その幅は28週から40週くらい)。例は少ないですが26週で発症したものもあれば産後に発症した例もあります。AFLPといっても最初は症状が少なく、嘔気、嘔吐、食欲低下、倦怠感、頭痛、上腹部痛など風邪や胃腸障害などの症状と似ているので、AFLPを疑ってかからないとその早期診断は難しいと言われます。

理学的所見として、発熱、黄疸などはAFLP患者さんの70%に出現するとても重要なものです。そのほか右上腹部痛や胃のあたりの痛みも比較的良く見られる症状ですね。重症化すると、急性の腎不全、脳炎、腸管出血、膵炎、凝固系異常(血液の止血に関わる重要な機能の異常)なども出てきます。妊娠高血圧症候群の合併も見られます。

AFLPの合併症の一つに母体の代謝性アシドーシス(血液内の環境が中性から酸性へ傾くこと)があり、これが直接、赤ちゃんの血液内の酸性、アルカリ性のバランスをも崩してしまいます。そうなると赤ちゃんに重大な影響があるので急いで赤ちゃんを出産させる必要があります。



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検査所見

AFLPを発症すると血液の検査で異常値が見られます。

白血球は15000/μlくらいあたりまで上昇します。出血など無ければヘマトクリットは正常ですね。溶血や血小板減少もなども見られます。プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間は両方延長しフィブリノーゲンも低下傾向ですね。DICが発症することもあり、そうなると数値の変動はさらにはげしくなります。

AST、ALT 300−500U/Lくらいは上昇(0から1000までの幅)。ただ、ウイルス性肝炎のように1000を超えることは少ないようですね。重症例では急性腎不全も合併することもあり、BUN、クレアチニンなども上昇することもあります。

診断

初発症状がありふれたものであるため診断は難しいですね。症状や経過が急性肝炎、妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、肝内胆汁うっ滞などと似ているんですね。そのためAFLPはその疾患を疑うこと、他の鑑別疾患を一つずつ消去していくことが重要と言えます。

ウイルス性急性肝炎は症状、検査データが似てます。しかし、急性肝炎は肝臓の逸脱酵素であるトランスアミラーゼがより高値に(1000U/Lを超えることも)、また炎症反応も陽性となることが多いことが鑑別に役立ちます。

妊娠高血圧症候群だけでは黄疸や低血糖などの症状は一般的にはでませんが、それらがあればAFLPを疑う必要があります。またAFLPのほうが妊娠高血圧症候群よりは症状の進行は早いといわれます。
HELLP症候群も似てます。HELLP症候群は溶血が主体となるので血小板減少がある、LDH(肝臓の損傷を示唆する検査項目)が上昇する点が鑑別に役に立ちます。ただ症状が進行するとAFLPもDICのために血小板の減少やLDHの上昇も出てきますが。

CTや超音波検査で脂肪肝を示すことができれば診断の一助となりますが、画像的に脂肪肝が無いからAFLPがないとは言い切れないので注意が必要です。

1950年代ころにはこの診断に肝臓の細胞を採取してくる「肝生検」が必要と言われていましたが、AFLPの患者さんが出血しやすい状況になっていることから肝生検をすることは危険な行為となることもあります。そのため最近では症状や血液検査から診断されることが多く、臨床の場で生検は積極的には行われない傾向にあります。

ただし、産後も肝機能が改善しない例や、診断がつかない早期のAFLPで分娩時機を決定する必要があるときは肝生検も参考になるとも言われています。生検が行われた際、病理学的特徴として肝細胞内に脂肪の沈着はあるが壊死や炎症所見はすくないことがあげられます。





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