心疾患と妊娠

心疾患と妊娠

心臓に何らかの病気がある方が妊娠をすることを、心疾患合併妊娠といいます。
心疾患合併妊娠はは妊娠総数の約1%、不整脈などを入れると2-3%になります。 妊娠すると循環動態が大きく変化しますが、この変化を頭に入れておくと心疾患合併妊娠の理解が深まります。

妊娠中の体液循環の変化

循環量の変化

妊娠により体には色々な変化が起きます。
(当サイト「妊娠中の体の変化」参照)
妊娠により体液(主に血液)の循環動態が大きく変化します。 これは妊娠期間中一定ではなく、週数や分娩中、分娩後でさらに変動が見られます。

妊娠により変動するエストロゲンやアルドステロンなどのホルモンの変化により体にナトリウムの貯留がおこります。 そのため循環血漿量(体を循環している血液量の中の水分ですね)は妊娠4週あたりから増加し始め、その後血漿量はどんどん増えて妊娠32週に最大となり、妊娠終了まで維持されます。

一般的に循環血漿量は妊娠前の約40%も増加します。(非妊時に5リットルくらい流れているとすると7リットルくらいに増加するわけですね)
循環する量が増えるので、ポンプである心臓が頑張って心拍数(心臓の拍動の回数)も増加します。 心拍数は約20%増加します。

循環血漿量が増加すると全身の血管の抵抗は低下してきます。 抹消の血管抵抗が低下すると周辺臓器へ血液が流れやすくなります。 特に子宮や乳房、腎臓などへの血流が増加します。

分娩時には循環動態は急激に変化します。
まず陣痛による痛みのために体が緊張状態となり、末梢の血管抵抗が増加して心臓に戻る血漿量が増えます。 また子宮が収縮することで、子宮から戻る量が増えてさらに循環血漿量が500mlも増加します。

心臓は大量の血液が戻ってきて仕事が一気に20%ほど増えます。 一時的に心拍数や血圧が増加します。

無事に分娩が終わってもまだまだ変化は続きます。 分娩時の出血は経腟分娩で500ml(帝王切開はその倍くらい)ほどです。 この出血に耐えうるように循環血漿量が増えていたんですね。 分娩後には循環動態は急速に非妊時の状態へ戻ろうとしますが、完全にもどるのは1ヶ月ほどかかります。
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血液成分の変化

血液は液体成分だけではなく沢山の細胞成分があります。
酸素の運搬に重要な赤血球、感染のときに活躍する白血球、出血を止めるときに働く血小板などですね。 妊娠するともちろん赤血球も増加しますが、その増加を上回るほどの血漿の増加があるため妊婦さんは相対的な貧血状態となっています。

妊娠中の増加した赤血球は普段の赤血球よりも球状となりより胎盤を通過しやすくなるらしいです。 よく出来ていますね。

また白血球も増加して平均で9000から11000(1mm3中)ほどになります。 妊娠中にたまたま会社などの健康診断で採血をすると、貧血あり、白血球増加という異常が検出されます。 ただ、妊娠中であればこれは異常値ではなく生理的な変動で心配する必要はありません。

妊娠中は血液の固まろうとする性質が高まります。(これを凝固能の亢進と言います) これは分娩後の出血にはとても役に立つのですが、妊娠中に血管内で血液が固まり血管を詰まらせてしまう「血栓症」がおこりやすくなってしまいます。 これは命に関わることもある非常に厄介な病態です。

血管壁の変化

血管は柔らかいパイプ上の臓器ですが、この血管の壁が妊娠によりもろく弱くなります(脆弱性が増す)。 このためマルファン症候群と呼ばれる病気を持っている妊婦さんは大動脈が避けてしまう怖い病気を起こす危険性があります。
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心臓機能分類

心臓の機能がどの程度正常かを評価する有名な分類がニューヨーク心臓協会(New York Heart Association: NYHA)が定めた「NYHA心機能分類」です。 どのくらいの運動に心臓が耐えうるのかを4つに分類したもので重症度の判定に使用されます。

NYHA心機能クラス分類
Class I
日常の身体活動では過度の疲労、呼吸困難、動悸や狭心痛を来さない
活動制限はなし
Class II
安静時には無症状。日常の身体活動で疲労、呼吸困難、動悸や狭心痛を来す
軽度活動制限あり
Class III
安静時には無症状。日常的な身体活動以下でも疲労、呼吸困難、動悸や狭心痛を来す
中等度活動制限あり
Class IV
心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する
わずかな労作でこれらの症状は増悪する
心疾患のためにいかなる身体活動も制限される




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