卵巣のう腫と妊娠

卵巣のう腫と妊娠

卵巣に出来るできものを卵巣腫瘍や卵巣のう腫などと言います。
腫瘍の中には良性のもの、悪性のもの、その中間の悪性度のものと種類が沢山あります。 卵巣腫瘍については当サイトの「良性卵巣腫瘍」「卵巣がん」をご覧下さい。

妊娠中に遭遇する卵巣のう腫の内で直径が5センチ以下のもので最も多いものは「黄体嚢胞(corpus luteum cyst)」と呼ばれるものです。 妊娠が成立すると着床した受精卵が分泌するhCGというホルモンが卵巣の黄体を刺激してホルモンの分泌を促します。 妊娠黄体となった黄体がホルモンをどんどん分泌するときにこの部分に嚢胞が形成されます。

つまり妊娠初期の小さな嚢胞はあって当たり前の状態なのです。
ただ、ある程度大きくなってくると問題となります。

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卵巣のう腫の診断

妊娠中に卵巣にできものが出来ている状態を「卵巣腫瘍合併妊娠」と言います。 厳密にいうと卵巣に出来るものすべてが腫瘍ではありませんが便宜上こう呼んでいます。 卵巣のう腫の管理で重要なことはその大きさと良性か悪性化の判断ですね。

超音波検査

超音波検査は婦人科の腫瘍性病変を調べるためにまず使用されます。 妊娠初期から経腟超音波検査を行いますので卵巣にできた嚢胞性腫瘤(袋状のできもの;水風船のようなイメージ)は比較的早くから発見されます。 超音波検査で卵巣のう腫の大きさやその形状から悪性の可能性が高いのかどうかが評価されます。

MRIやCT

妊娠中に放射線を使用する検査は極力さけなければなりませんのでCTはまず使用されません。 超音波以上に詳しく調べるためにはMRIが使用されることもあります。 MRIは主要成分の性状(水なのか油なのか血液なのかなど)を判別するには最適ですので。

腫瘍マーカー

卵巣のう腫の良性悪性の判断に参考になるCA125という腫瘍マーカー項目があります。 採血による検査ですが、高い数値であれば卵巣癌の可能性が高くなります。 ただ妊娠中は正常でもその基準値が上昇しているので妊娠中はこの検査はあまり参考になりません。

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卵巣のう腫合併妊娠の管理

妊娠中に発見されるほとんどの卵巣のう腫は良性の可能性が高く、直径が5センチ以下で悪性の所見が乏しい場合は一般的な経過観察が行われます。
妊娠初期に見られる妊娠黄体嚢胞は経過観察をしていると、妊娠15週ころには自然と縮小していくことが多いですね。

直径5センチから10センチの間の大きさの場合は超音波検査だけではなく、カラードップラー検査やMRI検査など詳細に検討します。悪性の可能性が低い場合は妊娠経過中に頻繁に超音波検査を行いその大きさの推移を観察します。

ただし、どんどん大きくなってきたとき、症状が出てきたとき、悪性の可能性がでてきたときは、切除が考慮されます。 特に超音波検査で内部に中核がある、充実性部分がある、嚢胞の壁が厚くなってくる、乳頭状の発育を認めるなど悪性所見が強く疑われる場合は手術を早急に行うべきでしょうね。

直径が10センチ以上となると悪性の可能性も高く、分娩進行の障害となることがあり外科的に切除する可能性は高くなりますね。

急ぐ必要はないが、妊娠中に卵巣の手術が必要となったときは妊娠14週から20週くらいに行われます。 妊娠初期の卵巣は黄体ホルモンを分泌して妊娠を維持していますので、初期に黄体が切除されると流産となる可能性があります。

もし妊娠10週以前に妊娠黄体嚢胞を切除せざる得ないときは妊娠継続のために黄体ホルモンの補充が必要となります。

卵巣のう腫合併妊娠で経過観察中に起こりうる重要な変化が「茎捻転」と「出血」です。

卵巣のう腫茎捻転

卵巣はおなかの中でぶらぶらとぶら下がっている状態です。 卵巣のう腫が5センチ以上になるとある程度の重さがありますので、何かの拍子にぶらぶらした卵巣のう腫がねじれることがあります。捻れることを卵巣のう腫の茎捻転といいます。

捻れ方が強いと卵巣への血液の供給が遮断され卵巣は虚血状態になりものすごい痛みを引き起こします。 この痛みは徐々に強くなる場合もありますが、2回転から3回転くらいに捻れるといきなり激痛が発症します。 このような場合は緊急手術により捻転の解除やある程度時間が経過していれば卵巣が壊死している可能性もありその際は卵巣のう腫ごと卵巣を切除せざるを得なくなります。

茎捻転は運動でジャンプをしたり、性交渉が原因で発生することがあるので卵巣のう腫があるときはこのような行動は控えた方が良いでしょうね。

卵巣のう腫の出血

卵巣のう腫からの出血の多くは妊娠黄体嚢胞が破裂することが原因です。 たとえ出血が起こっても症状がおちついてくれば経過を見ることができますが、出血が持続するときには外科的に止血することになります。

卵巣がん合併妊娠の管理

卵巣がんが妊娠に合併することは珍しいことで、20000から50000妊娠に1例ほどの頻度と言われます。 妊娠という現象を調べているとたまたま発見されるために比較的早期の状態で発見されることが多く、卵巣がんにしては珍しくあまり進行していない卵巣がんI期が多いのが特徴です。 そのため5年生存率も70-90%ほどと報告されています。

卵巣がんにはたくさんの種類がありますが、そのうちでも悪性度の低いタイプのもので早期のものであれば卵巣腫瘍だけの切除でおわり、追加治療としての抗がん剤治療が行われないこともあります。

ある程度進行したものであれば、たとえ妊娠中であっても、術後の抗がん剤治療が必要となることもあります。妊娠中に抗がん剤という強いお薬をしようするので十分な説明と同意は必要ですね。




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