卵胞発育不良の治療
ここでは、poor responderと卵巣機能に関して説明します。
poor responderとは
IVF-ETの排卵誘発や排卵障害の方にhMG製剤などのゴナドトロピンなどによる刺激を行いますが、その刺激に対する反応が不良(卵胞の発育不良)な方をpoor responderもしくはlow responderといい、卵巣反応不良例と訳されます。
poor responderの定義は決まっていませんが、hCG投与時の成熟卵胞数が3個以下とか血中エストラジオールの値が500pg/ml以下などから判断されることが多いです。
卵巣機能について
poor responderの場合は卵巣機能が低下していることを示しています。
卵巣機能が低下する際のホルモンの値はどのように変化するのでしょうか?
卵巣機能が低下してくると下垂体からのFSHというホルモンの分泌が増加します。(negative feedback)
「卵巣からのホルモンが減少しているぞ」と判断して、下垂体はFSHの分泌量を増加させて、卵巣からのホルモンの分泌を増加させようとするわけですね。
これで卵巣からエストラジオールなどの分泌が増えてくればよいのですが、機能が低下した卵巣はそれでも反応しなくなります。
女性のホルモンの数値は月経周期でダイナミックに変化しますが、月経が始まって数日はこのホルモンの数値がもっとも安定しています。
月経開始3日目(day3)あたりのホルモン値は基礎レベルのホルモン値として、卵巣機能の状態を表します。
卵巣機能が低下し始めるのは一般的に30代なかばころからといわれていますが、ホルモン値の最初の変化として重要なのがFSHの値です。
月経が順調に発来して、排卵している方でもhMGの刺激に反応しないことも多いんです。
その場合はFSHの基礎値が上昇していることが珍しくありません。
このFSHの上昇は卵巣機能の低下の始まりを意味するといわれています。
軽度のFSHの上昇では月経周期を不規則にするほどの影響力はありません。
そのため、卵巣機能低下が始まっていることが自覚されないことも多いんです。
FSHとARTの成績
同じ年齢であっても卵巣機能、hMG製剤などによる卵巣の反応は個人差が非常に大きいです。
FSHの基礎値が上昇した方の妊娠率は低くなる傾向があるとされています。
採卵の数が少ないため良好胚が得られる確率が低下します。
その結果、移植できる胚の数も減少し、凍結保存する胚の数も減少します。
poor responderの方は卵の質や胚の質が低下していることも多く、結果として妊娠率も低下するといわれています。
具体的なFSHの測定値
poor responderを想定するとき、どのくらいの数値を採用するかで判断が変わってきます。
一般的には、day3ので血中FSHの数値が8mIU/ml以上であれば、卵巣の予備能力が低下していると考えられており、成熟卵胞の数も減ってきます。
統計的にFSHの基礎値が25mIU/mlを越えると妊娠の可能性が非常に低くなるともいわれています。
卵巣の大きさ
閉経した方をみると卵巣は萎縮して小さくなっています。
卵巣の機能と卵巣の大きさは比例する場合もあります。
年齢が比較的若くても、超音波検査で卵巣自体の大きさ(体積)がおもったよりも小さい方もいらっしゃいます。
具体的な体積を測定するのは難しいのですが、超音波検査で多方向から卵巣を測定し基準よりも小さいとFSHの基礎値も低いというデータもあります。
卵巣を手術で片方切除した場合や一部切除した場合は卵巣の体積が減少しますが、その場合でもFSHの基礎値が正常であれば卵巣の反応もよいとされています。
卵巣の体積イコール卵巣機能とはいえませんが、参考にはなると思います。
poor responderへの対応
加齢による卵巣機能低下は、その対応は難しくなってきます。
加齢による卵の質や胚の質を直接的にupさせることが困難だからです。
いろいろな方法が試されていますが、これだ!という方法はなかなかないのが現状です。
単純に、使用するhMG製剤の投与量を増やすという方法がまず考えられます。
通常では一回150単位くらい投与されますが、300単位、450単位まで増加することで妊娠率が向上したとい報告もあります。
しかし、この方法も否定的な意見もあります。
大量投与することで逆に卵の質を低下させる可能性があるとか、通常量で反応しない場合は増加させても効果はないとかいわれています。
卵胞発育には成長ホルモンも関与しているといわれています。
成長ホルモンを併用することでhMGの投与量を少なくできたという報告もありますが、poor responderに対してはっきりとした効果はまだ分かっていません。
Gn-RHアゴニスト(スプレキュアなど)のshort plotocolはpoor responderにはよいといわれています。
longやshort plotocol以外にもGn-RHアゴニスト(スプレキュアなど)の投与方法を工夫したものも試みられています。
また、つい先日、日本でも発売されたGn-RHアンタゴニスト(セトロタイド)を使用する方法も良い効果があると考えられており、今後の報告が期待されます。


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