卵巣がんの広がりの評価(進行期分類)

治療開始前に画像診断などで卵巣癌としてのだいたいの進行期を推測(臨床進行期)しますが、これはあくまでも術前の評価でしかありません。
卵巣癌は手術をして始めて卵巣癌であることが確認でき、その広がりを肉眼的、組織学的に評価することができます。
最終的には術後に、どのくらいまで癌が広がっているかを評価し、進行期を決定します。

子宮頚癌や子宮体癌と同じで卵巣癌がもっとも進行した状態はIV期です。
しかし、子宮癌と違って、卵巣癌は0期癌という概念がありません。
卵巣癌はI期〜IV期までを細分化してその広がり評価します。

I期

卵巣だけに癌が存在する場合が「卵巣癌のI期」です。
一般的にI期は癌としての症状がないので、良性卵巣腫瘍の術前診断で手術をして術後の病理学的検査で卵巣癌と確定されることも結構多いです。
Ic期になると腹水に癌細胞を出現しますが、これは癌細胞が卵巣をこえて広がり始めていることを表しています。
卵巣癌の手術時できるだけ袋状の腫瘍を破らずに摘出する必要があります。
周囲との癒着を剥がす際に、意図せず卵巣腫瘍の内容液が漏れ出た(ruptureした)場合はもともとはIa期であっても、術後進行期はIc期となります。

stage 広がりの程度
Ia期 片方の卵巣に限局している
Ib期 左右、両方の卵巣に限局している
Ic期 腫瘍を形成している膜が破れて中身が腹腔内に流出している
または、腫瘍表面に悪性細胞を認める
または、腹水に悪性細胞を認める(腹水細胞診陽性)

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II期

卵巣癌が卵巣を飛び出し、骨盤内臓器のみに転移した状態は「卵巣癌のII期」となります。
お腹の中は骨盤のところで何らかの物理的境界があるわけではないの、たまたま骨盤内だけに転移が見られるII期という状態は確率的に少ないことが予想されます。
実際に卵巣癌II期は珍しいものです。
つまり卵巣癌I期の後に、一気にIII期なりやすい傾向があるということです。

stege 広がりの程度
IIa期 子宮や卵管に及んでいる
IIb期 他の骨盤臓器に及んでいる(膀胱表面など)
IIc期 IIa期またはIIb期の状態で
腫瘍を形成している膜が破れて中身が腹腔内に流出している
または、腫瘍表面に悪性細胞を認める
または、腹水に悪性細胞を認める

III期

上腹部臓器の表面まで転移が広がると「卵巣癌のIII期」となります。
この状態は「腹腔内播種」とも言われます。
「播種(はしゅ)」とは畑に種をパラパラとまくようにおなかなの内側の皮の表面(腹膜)に癌が転移した状態です。

転移先でも急速に増大する傾向があるので転移先の腫瘍は比較的簡単に直径2センチを超えてしまいます。胃から前掛けのように垂れ下がっている膜状の「大網(omentum)」という臓器がありますが、ここへ簡単に転移し10センチ以上の転移巣を形成することもよくよく見かけます。

原発巣である卵巣の腫瘍よりも転移巣である大網の腫瘤が大きくなっていることも多いです。
(大網の転移巣はパンケーキのような形の腫瘤を形成しやすく「omental cake」といわれます)
omental cakeはCTなどでもはっきりと描出されるので、これが見えただけでIIIc期が強く疑われることになります。

stage 広がりの程度
IIIa期 肉眼的には認めないが、顕微鏡レベルでの播種がある
IIIb期 播種した部分の直径が2センチ以下のもの
IIIc期 播種した部分の直径が2センチ以上のもの、
または後腹膜や鼠径部リンパ節転移

IV期

腹腔内から飛び出して脳や肺などの遠隔転移があると「卵巣癌のIV期」となります。
肝臓の表面だけに転移巣があるときはIIIc期ですが、肝臓内に転移巣があるとIV期となります。

術前のCTや胸部X線検査、肺の細胞診などで診断されることになります。


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卵巣という臓器の特殊性と卵巣癌の転移

卵巣の存在する場所や周囲との関係は卵巣癌の広がり方を考える上で重要になります。
卵巣は腹腔内に露出して、周囲との臓器からはほとんど独立した臓器です。
(卵巣を固定している靱帯や血管は卵巣とくっついていますが、ハンモックのようにプラプラした状態です)

そのため、卵巣に悪性腫瘍が形成されたときには簡単に周囲、とくに腹腔内という閉じた空間内に広がります。腫瘍などから産生される腹水や腸蠕動によってすぐそばの卵巣や子宮はもとより、遠く肝臓表面や横隔膜表面まで、あたかも種を播いたように転移します。
沢山の癌細胞が卵巣からばらまかれ、それぞれが転移先で腹膜や肝臓表面に根付き、新しい栄養血管を作り出し、同時多発的にどんどん癌が成長してゆくことになります。

卵巣腫瘍が形成されてどんどん大きくなっても周囲に壁となるものがないため容易に巨大化してしまいます。
周囲に進行を妨げる臓器がないということは、癌の浸潤による痛みなどの症状もでにくいということになります。

そのため卵巣癌の患者さんは、腫瘍がかなり巨大になってお腹から触れるようになるか、腹水が数リットル貯まってから病院へいくことになるわけです。残念ながら、この時、すでに「卵巣癌IIIc期」くらいになっています・・・。

これが卵巣癌が「silent killer」と呼ばれる所以です。





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