不妊症治療総論 3/3

Assisted Reproductive Technology(ART)

生殖補助医療や補助生殖医療と訳されて、その技術を使用した不妊治療を高度生殖医療といいます
(ARTはまさに"art"ですね)。
卵子や精子や胚を顕微鏡下に扱う不妊治療ですね。
体外受精-胚移植、配偶子卵管内移植、接合子卵管内移植、顕微授精、胚の凍結保存などが含まれます。最近はARTを有する施設が増えてきたとはいえ、どこの病院でもできるものではありません。 高度生殖医療といわれるだけあって、専門の知識、設備、スタッフが必要になってきます。

一般的な体外受精

ARTの中でもっともメジャーな技術が体外受精-胚移植(in vitro fertilization and embryonal transfer:IVF-ET)ですね。
in vitroとは「ガラス器内で」と言う意味で、ちなみにin vivoは「生体内で」という意味です。

成熟卵胞を経膣超音波で見ながら針で突き刺して卵胞液も含めて多数の卵子を採取します。培養液中で精子と混ぜ合わせ、受精を確認して培養を継続し、分割卵(胚)を子宮内に移植する方法です。

体外受精以外に妊娠の見込みがない場合のみに使用される技術で、
・卵管の障害による不妊症
・精子の数が非常に少ない場合や運動率が非常に低い場合
・免疫性の不妊症
・子宮内膜症などの腹膜因子による不妊症
・原因不明の不妊症
などが対象となります。

GIFTとZIFT

より自然な妊娠課程を模倣しようという試みから行われたのが配偶子卵管内移植(GIFT)や接合子卵管内移植(ZIFT)です。
これらは卵子と精子を人工的に採取することはIVF-ETと同じですが、戻す場所が卵管内である点が違います。前者は卵子と精子を採取したらすぐに卵管内に戻す方法で、後者は体外で受精を確認してから卵管に戻す方法ですね。 ※GIFT:gamete intrafallopian transfer、ZIFT:zygote intrafallopian transfer

卵管に戻す際に腹腔鏡が必要となり、また全身麻酔も必要となるなどIVF-ETよりも煩雑であるため最近ではこの方法を行っているところが減少傾向にあります。 ただ、IVF-ETよりも妊娠率が高いと言われています。 これは、受精卵は卵管内で自然に分割する方がより自然であると推測されています。 しかし、この方法は卵管の機能が正常でなければ実施できないという制約もあります。

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顕微授精

IVF-ETの受精の段階をもっと直接的に関与するのが顕微授精(microfertilization)です。
究極の授精方法でいくつかの方法がありますが、代表的なのが卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection;ICSI)(イクシーと呼ばれます)です。

非常に小さい注射針を作成して精子一個を吸引し、卵子の細胞質の中に直接注入する方法です。理論的には精子一個でもあれば可能な技術で、重症の男性不妊症(精子がほとんど存在しない場合)や免疫学的不妊症などが対象となります。

顕微授精のさらに究極的な方法が、MESA-ICSIやTESA-ICSIです。
男性の精巣や精巣上体に存在する精子を外科的に採取してきて顕微授精を行うものです。以前は夫ではない他人の精子を利用したAIDでしか妊娠が不可能とされてきた男性不妊症の場合も妊娠が可能となってきたわけです。

胚凍結保存や凍結胚移植

少しこれまでのカテゴリーとは違いますが、重要なものが胚凍結保存や凍結胚移植ですね。
前者は、IVF-ETの際に余った胚を捨てずに超低温環境で凍結して保存する技術で、妊娠が成立しなかった際は凍結しておいた胚を解凍して移植するのが後者ですね。受精して分割がはじまった胚の時間を止めて保存するわけですね。これはすごい技術です!

目的は余った胚(余剰胚)の有効活用、OHSSの予防、多胎妊娠の防止、患者負担の軽減などですね。理論的に半永久的に保存が可能で、何年経っていても解凍してまた細胞分裂を再開させることができるわけです。(もちろん、復活できない胚(loss)もあります。)

孵化促進法(assisted hatching:AHA)

受精卵がより分割した段階で移植する胚盤胞移植や胚移植の着床率を向上させる目的で孵化促進法(assisted hatching:AHA)という技術もあります。AHAは、一卵性双胎(いろいろなリスクが高くなる双胎)の発生率が上昇するともいわれています。

ARTの成績

平成15年末での、日本産科婦人科学会の報告をいくつかご紹介します。全国平均と考えられます。
ARTの登録施設は全国で590施設で、平成15年にARTで出生した赤ちゃんは17400人でした。
最近の年間総出生数の1%くらいはARTによる出生となりますね。
これまでの日本の累計出生児数は117589人と11万人を越えていました。

新鮮胚を使用したIVF-ETでの妊娠率は移植あたり29.8%で、そのうちの流産率が22.4%という成績でした。前は妊娠率が25%くらいだったので成績は上がってきてますね。一般の流産率が15%くらいなので流産率はやや高いことになりますが、これは対象者の元々の素因も関与しており(年齢などの因子)一概に比較はできません。





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