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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

良性卵巣腫瘍

卵巣の腫れとは・・・

ここでは卵巣にできる腫瘍性病変(できもの)について説明します。
似たような漢字がたくさん出てきますので注意してじっくり読んでくださいね。

産婦人科の診察の後に「卵巣が腫れてますね」告げられたとき、考えられる状態は以下のように沢山あります。

1.ホルモンの影響で大きくなる場合
2.感染して膿がたまった状態(膿腫)や血液がたまった状態(血腫)
3.子宮内膜症のときのチョコレート嚢胞
4.腫瘍性病変(良性の卵巣腫瘍や卵巣癌など)
5.卵巣以外の病気(卵巣の病気と間違って診断されることあるのでここに含めました)

「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」という言葉が一般的ですが、これは「内部に液体を含んだ袋状(嚢胞性)のものができて卵巣全体が大きくなっている」状態を表しています。 卵巣はこの液体が中に入った袋状のもの(水風船のようなイメージ)を作りやすい性質があります。 上の1〜4までのものを「卵巣嚢腫」と一般的には呼ばれています。
厳密には4の腫瘍性病変のところには「嚢胞性」のものだけではなく、堅い中身の詰まったもの(充実性)もありすべて「卵巣嚢腫」と呼べないところでもあります。

卵巣にできる新生物を「卵巣腫瘍」といいます。
上の1〜3など「腫瘍ではない袋状のもの」を「卵巣嚢胞(のうほう)=ovarian cyst」と呼んで区別されます。
卵巣嚢腫の中に卵巣腫瘍の場合と、卵巣嚢胞の場合があることになりますね。

これらの呼び方が混在して「チョコレート嚢腫」となったり「チョコレート嚢胞」となったりします。
正確にはチョコレート嚢胞(のうほう)となります。

卵巣は症状が出にくい?

一般的な卵巣腫瘍は痛みがないためものすごく大きくなるまで気付かれないことも多いです。
チョコレート嚢胞や卵巣膿腫(膿がたまる)のように癒着や炎症がおきると、また卵巣癌が周囲の臓器を破壊しはじめたときなどは痛みを伴います。 卵巣癌の場合はよほど進行しないと痛みが出てこないので発見さえたときはすでにあちこちに転移していることも・・・。

卵巣嚢腫すべてが手術などの治療の対象になるわけではありません。
自然消失が予想されれば、定期的に大きさなどをチェックして経過を観察します。 一方、腫瘍性の病変は自然となくならないので、手術などの治療が必要となります。

検査としては内診、経膣超音波検査、必要に応じて腫瘍マーカー検査、CT、MRIなどを追加します。

卵巣嚢腫茎捻転

卵巣腫瘍は存在するだけでは痛くないと書きましたが、ものすごく痛くなるときがあります。
茎捻転といって卵巣腫瘍がつながっている血管のあたりで捻れて(スポーツや性交渉の後)、おなかの中で卵巣嚢腫がうっ血して、どす黒くなってくるとものすごい痛みが発生します。

これが発生すると、自分では救急車を呼ぶことができなくなるくらいの痛みのようです。 緊急で手術をして捻れた卵巣ごと全部摘出する必要があります。 完全にねじれた卵巣を残すことはほとんど不可能です。
産婦人科の緊急疾患の一つです。

直径5〜6センチくらいがもっとも捻れやすく危険なサイズです。 もしそのような卵巣腫瘍をおもちの方は飛び跳ねるタイプのスポーツや激しい性交渉は厳禁です。

一般的な卵巣腫瘍について

卵巣腫瘍はものすごい種類があります。
卵巣は人間の体の中でもっも多彩な腫瘍を作り出す臓器なんです。
卵巣の腫瘍は「良性」「悪性」「境界型」に大きく分けられ、良性腫瘍だけでもゆうに10種類を越えています。 悪性に関しては卵巣癌の項目をご覧ください。

ただ、すべての腫瘍が同じような頻度で発生しているわけではありません。
とってもポピュラーなものから、滅多に無いような珍しいものまであります。
良性卵巣腫瘍で多いものは

「漿液性嚢胞腺腫」(さらさらとした液体がたまります)
「粘液性嚢胞腺腫」(とろっとした液体がたまります)
「奇形腫」(髪の毛、脂肪、歯や骨を含んだもの)

その中でも若い女性の卵巣腫瘍の中ではもっとも多く、「奇形腫」について解説します。

奇形腫って?

一般的な「奇形腫」は正式名称を「卵巣成熟嚢胞性奇形腫」(別名;皮様嚢腫=dermoid cyst)といいます。
産婦人科医は「デルモイド」と呼びます。

奇形種はどんな腫瘍なの?

大きさは数センチくらいのもの多いのですが、発見が遅れると10センチを超えることもあります。 これが存在していても癒着やねじれがなければ痛くも痒くもなく無症状です。 たまたま他のことでおなかのCTをとったり、妊娠して初めて超音波検査で見つかったり、子宮がん検診で見つかったりと偶然発見されることがとても多いです。(なにしろ症状がありませんからね・・・) 片方だけではなく両方の卵巣に発生することもかなり多いです。

奇形腫を取り出してメスで切ってみると中から黄色い脂肪、髪の毛、骨や歯、時には皮膚の一部がどろどろと出てきます。 初めて見ると髪の毛などが入ってますのでとてもインパクトがあります。 一般的に中に入っている髪の毛は数本ではなく大量で、hair ballといって、お風呂の排水溝に詰まった髪の毛の塊のようになって出てくることも多いです。

ブラックジャックという手塚治虫の漫画のなかにピノコという女の子が出てきますが、この奇形腫がモデルになっています。 もちろん、実際に出てきた腫瘍で女の子を作ることはできませんよ。アッチョンブリケ(>_<)。

なぜ髪の毛や歯ができるの?

奇形腫は卵巣腫瘍の中では「胚細胞性腫瘍」に分類されています。
胚細胞は卵子や精子のことです。 奇形腫はこの胚細胞の元になる細胞(原始生殖細胞)が腫瘍となり増殖したものです。 卵子は精子と受精して1人の人間を作り出します。 卵子や精子という細胞は人間の体を構成するすべての細胞の大元になるわけです。 この卵子や精子の元になる細胞が暴走して腫瘍化したので、皮膚の成分(髪の毛や脂肪組織)や骨や歯の成分などを作り出してしまうという訳です。

奇形種の診断はどうするの?

骨や脂肪などの成分が含まれているので、CTや超音波検査で手術前に診断はほとんどついてしまいます。(100%ではないですが・・・。)

奇形種の治療はどうするの?

治療は手術で摘出する以外にありません。
小さなものでもいずれは大きくなってきますので、診断がつけば手術となります。 良性の卵巣腫瘍全般に言えることですが、小さいうちに手術をすると正常の卵巣を残しながら、腫瘍のところだけ摘出することができ卵巣の機能を保つことができます。

しかし、10センチを超えてくると正常部分を残すことが難しくなります。 もし大きくて片方の卵巣を全部摘出して、もう片方の卵巣だけになった場合でも卵管の異常などがなければ通常の妊娠をすることは充分に可能です。

その他の卵巣のいろいろな病気

ルテイン嚢胞

妊娠初期に卵巣は一時的に大きくなることがあります。 妊娠するとHCGというホルモンが胎盤から分泌されますが、これが卵巣を刺激し嚢胞をつくります。 妊娠15週くらいには自然に小さくなっていることが多いです。 ときに手術となることもあります。

チョコレート嚢胞(chocolate cyst)

子宮内膜症の病変が卵巣表面に存在している場合に発生します。 子宮内膜症があると大なり小なりほとんどの人がこのチョコレートをもっています。 卵巣表面で毎月出血を繰り返し、最初は小さかった血腫が少しずつ大きくなって行きます。 血液は古くなるとまるで溶かしたチョコレートのようにどろどろの状態になるのでこんな名前が付いています。 大きくなると高率に周りの臓器と癒着するので痛みを伴ってきます。 手術で取り出すときは卵巣から削り取るような感じで摘出します。

卵巣出血(血腫)

排卵後に黄体となる卵胞内の血管が破れて出血黄体となりますが、この出血が多いと卵巣に大きな血の袋(血腫)を形成してしまうことがあります。 多いときにはおなかの中に大量の出血がたまり、激痛やショック状態のため開腹手術が必要となることもあります。 開腹手術までならなくても、5センチくらいの血腫ができて入院管理となることはよくあります。

卵巣妊娠

子宮外妊娠の一つの形で、卵巣に着床してある程度まで大きくなったもの。
卵巣の部分切除をすることもあります。

卵巣に近くて卵巣の病気と間違われるもの

超音波検査やCT検査で卵巣周辺に腫れているところがあれば、必ず卵巣の病気とは限りません。

傍卵巣嚢胞

卵巣のそばにできた液体を含んだ袋状のものです。
厳密には卵巣腫瘍でもなんでもないのですが、大きくなると卵巣腫瘍として診断されて手術となります。 おなか開けると正常な卵巣がそばに見えているのですぐに診断がつくことが多いです。

虫垂や小腸由来の腫瘍

虫垂(もうちょう)の腫瘍で右の卵巣あたりに癒着すると、手術前は卵巣と診断されていることは多いです。
外科的に切除されます。

卵管水腫

卵管采などが完全閉塞して数センチの大きさとなり卵巣腫瘍と間違われることがあります。
ただ、超音波検査などではソーセージのように見えることが多いのでだいたい予想はつきます。


 

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