胚凍結保存と移植|1/3

胚凍結保存と移植 1/3

ここでは、現在ARTを行っているほとんどの施設で行われている重要な技術である、胚の凍結について解説します。

胚を凍結保存するということ

IVF-ETの際に複数個の受精卵が発生したとき、良好胚をえらんで移植しても胚が余るときがあります。
そのような場合に胚を凍結して分裂を停止させ長期保存する技術があります。
これを胚の凍結保存といい、現代のARTには欠かせない技術です。
凍結していた胚は解凍して移植を行うことができます(凍結融解胚移植)。

保存技術が進歩して液体窒素(マイナス196度)の中で、理論的にほぼ半永久的に保存を行うことができるようになりました。一人目のお子さんが生まれてしばらくして、一人目のお子さんが妊娠する前に保存していた胚を移植し妊娠することも可能となりますね。その場合、兄弟で年齢は違いますが、受精したのは同じ日という不思議なことが起きます。
20年くらい前から存在している技術なので、ヒトではまだそんなに長期保存の例は少ないですが、マウスの胚を25年後に移植して正常な妊娠、出産も確認されています。

胚を凍結するといっても簡単なことではありません、これまでに沢山の研究が行われて現在の方法が確立されてきました。生きた細胞である胚を凍結保存して、分割を停止させ(胚の時間を止めることになりますね)、一定の期間保存し、今度は解凍して分割を再開させ、着床、妊娠継続に持っていくことは非常に大変なことなんです。

アイスコーヒーなどに入れる氷を作ることを考えてみてください。
製氷用のプラスチックの容器に水をいれ、冷凍庫にいれます。数時間すると氷ができますが、その氷をみると容器から氷の表面が盛り上がって体積が増えていたり、割れて亀裂が入っていたりしますよね。胚を含んだ培養液をそのまま凍結させても、胚の中の水分が結晶化して胚が内部から破壊されたり、浸透圧の関係で胚が膨張したり、縮小したり、培養液に亀裂が入りたまたまその亀裂に胚が存在すると胚が外部から破壊されたりしてしまいます。

そのような胚の凍結保存も、保存液を含めた技術的な進歩により、今では一般的に行われるようになりました。
日本で年間約4万件の新鮮胚を用いたIVF-ETが行われていますが、凍結融解胚移植は3万件を越えており、新鮮胚に追いつこうかという勢いです。
凍結融解胚移植による出生児も年間5000人を越えています(新鮮胚では年間6000人以上です)。

凍結融解胚移植の成績

妊娠率の高さや流産率の低さは新鮮胚を用いたIVF-ETを若干越える好成績です。
しかし、凍結融解胚移植が圧倒的に有利かというとそこまではありません。
ただ、凍結融解胚移植の技術が進歩したことは事実です。
新鮮な胚を移植する場合と、長いと数年経った後に移植した場合がほぼ同じような結果なんですからね。





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