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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

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人工授精(AIH)

AIHとは?

人工授精(intrauterine insemination:IUI)は人工的に精子を女性の生殖器内へ注入することです。
一般的には配偶者の精子を使用しAIH:Artificial Insemination with Husband's semen=配偶者間人工授精と呼ばれます。
何らかの理由で配偶者の精子が使用できない場合は配偶者以外の精子を使用することになります。
これはAID:Artificial Insemination with Donor's semen=非配偶者間人工授精と区別されています。
人における最初のAIHの成功例は約300年前になるそうです。

どんな利点があるの?

AIHは一般に子宮内に精子を注入しますが、この目的は卵子に到達する精子の数を少しでも増加させ妊娠率を向上させようというものです。精子を人工的に採取するので注入する前に精子の選別、洗浄、濃縮といったなんらかの処置を施すことと、卵子までの物理的な距離を縮めるという利点があります。
ただ、受精以後の過程は自然妊娠と何ら変わりはないので女性側に明らかな不妊原因がないということが前提となります。

どんな場合にAIHを選択するの?

・精子や精液の量や質の異常
・射精や性交障害
・頚管粘液と精子の不適合
・機能性不妊
        などのときにAIHが選択されます。

精子や精液の量や質の異常としての基準は施設により違いもあります。
例としては精子濃度が2000万個/ml未満の乏精子症、精子の運動率が50%未満の精子無力症、精液量が1ml未満の乏精液症などです。

射精や性交障害としては交通事故などによる脊髄の損傷、尿道の一部に穴が空いている尿道下裂、陰茎の変形やインポテンツなどがあります。 頚管粘液と精子の不適合はフーナーテストや抗精子抗体の有無により判定されます。いわゆる頸管因子による不妊症はAIHの良い適用となります。 明らかな不妊症の原因が発見できず、かつ一般的なタイミング治療等を行っても妊娠が成立しない場合(機能性不妊)もAIHが行われます。

ただし、両側卵管閉塞や感染症が存在する場合はAIHは施行されません。
病原体などを子宮内から卵管、腹腔内へと広げてしまうかもしれないのです。クラミジアなどは治療を行っておく必要がありますね。

具体的な方法は?

流れとしては
1.施行日の決定
2.精液の採取
3.精液の処理
4.精液の注入  となります。

AIH実施前には一般不妊症検査はすませておく必要がありますね。卵管閉塞が発見されればAIHの適応から外れるからです。

施行日の決定

一般不妊症治療の総論で解説しましたが、AIHの際に自然排卵で行う場合と、排卵誘発剤を使用する場合とがあります。 AIHの実施日はタイミング療法と同じように経膣超音波による卵胞測定、LH測定、エストロゲン測定、基礎体温表などを使用し総合的に判断します。排卵日にAIH実施日をぴったり合わせることがとても重要なので排卵のきっかけを作り出す薬剤であるhCGを注射することがあります。

hCGを使用した場合は約36時間後に排卵しますので、それにあわせてAIHを行います。 自然排卵でも良いのですが、精子との出会いを少しでも増やすという目的では排卵が正常に行われていてもクロミッドやhMGなどで過排卵を起こす方がより効果があります(反面、多胎やOHSSのリスクはでてきますが・・・)。

精液の採取と前処置

AIH当日、男性はあらかじめ渡されていた容器に自宅、もしくは病院でマスターベーションで精子を採取します。自宅で採取する場合は2時間以内にAIHができるように採取します。射精後37度で20分くらいするととろっとした精液がサラサラと液状化します。顕微鏡で精液を観察し、精子の状態をチェックします。

また、注入する精子もそのままを使用する方法から濃縮や洗浄をしてから注入する方法があります。 そのまま注入する場合は感染の可能性があったり、注入後に子宮攣縮による疼痛が出現することがあります。

精液の処理としてはパーコール法やswim up法などがあります。
前者はパーコール液というものに精液をいれて遠心分離器で遠心し、精子を洗浄、濃縮し使用します。後者は培養液などと精液を一緒に入れしばらく放置しておきます。元気の良い精子が泳いで培養液の方に集まってきますのでそれを回収して使用します。元気の良い精子が得られますが、精子の数がやや減少します。

精液の注入

精液の注入は一般的には子宮内に行われます。
AIH専用のカテーテル(管)に精液がはいった注射器を接続して、先端を子宮内にいれ調整した精液を0.5mlほど、ゆっくり注入します。このとき注入する量が多すぎたり、早すぎたりすると痛みや嘔気と伴うことがあるので、十分に注意して行われます。無処理の精子を使用するときはこのような症状が起きやすいですね。授精後は30分くらい腰枕を入れて休んでいただきます。翌日や翌々日に排卵や副作用の有無をチェックします。場合によっては再度注入を行うこともあります。

副作用は?

注入の際に子宮の攣縮といって子宮が細かくけいれんすることや注入した精液が卵管を伝って腹腔内に漏れ出て腹膜刺激症状を起こすことがあります。これらはゆっくりと適量を注入することでかなり押さえることができますが、痛みの程度は個人差があります。
一般的には授精後の安静で改善してきますが、場合により痛み止めを使用することがあります。 人工的な操作になりますので子宮内に感染を起こすことがあります。その予防として抗生剤の内服を処方されることが多いと思います。

AIHはどのくらい行えるのか?

10回目のAIHで妊娠成立という方もおられますが、珍しい方になります。
一般的には4〜6回が目安といわれています。
というのも回数が増えれば累積妊娠数が増えるわけではなく、頭打ちがきて妊娠率が増えてこないからです。時間的に余裕があれば良いのですが、余裕がない場合は漫然とAIHをつづけることは貴重な時間を損失する可能性があります。続けるにしても排卵誘発を併用するなどの変化をつけることも大切かと思います。AIHで妊娠成立とならない場合は希望によりARTへステップアップすることになります。


 

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